胃腸の異常

胃腸の異常

内部寄生虫
 犬の体内に寄生虫がいることは少しも珍しいことではない。現にたいていの子犬は、生まれつき内部寄生虫を宿しているが、生まれてすぐ母犬の乳から体内に取り込むことになる。ほとんどの場合犬に害はないのだが、飼い主にとっては心配の種である。愛犬の糞便の中に成虫を確認できることが、一般的には寄生虫の有無を確認するには、獣医の顕微鏡で検査してもらう必要があり、そのうえで虫の種類に応じた適切な投薬治療も可能になる。毎年愛犬の健康診断を受ける際に、必ず糞便の検査をしてもらう必要がある。

犬に多くみられる内部寄生虫
虫の種類 特徴 検出法 症状 治療法
回虫 子犬は母犬の胎内で感染。
年齢を問わず卵の摂取により感染。
スパゲティ状の成虫が子犬の糞便に存在。糞便の顕微鏡検査で卵を確認。 通常軽い嘔吐と下痢。大量発生の場合、体重の減少、毛づやの悪化、太鼓腹などの症状。卵により人間にも感染。 ワクチン接種時などに投薬治療
鉤虫 腸内に寄生し、吸血、母乳による感染、
皮膚からの浸入、幼虫の経口感染の3つの感染経路。
裸眼では視認不可。成虫あるいは卵を確認するには検便が必要。 貧血、下痢。 衛生的環境の維持により予防。獣医の処方による投薬により駆除。
鞭虫 大腸に寄生、非衛生的環境が原因。 通常は顕微鏡検査で成虫ないし卵を確認。 下痢、ときに血便や粘液便。 衛生的環境の維持。獣医の処方による投薬により駆除。
条虫
(サナダムシ)
小腸に寄生。条虫に感染したキャリア(おもにノミ、ほかに
ウサギ、ネズミなど)の摂取による感染。
糞便中に成虫の断片を視認可能。肛門の周囲に米のような乾燥した粒を視認可能。 通常は無症状。 ノミの駆除により予防。獣医の処方による投薬により駆除。
コクシジウム 非衛生的で混雑した住環境が原因。 顕微鏡による検便。 下痢。 衛生的環境の維持。投薬により治療は容易。
ジアルジア 汚染された水の飲用により感染。 顕微鏡による検便。 下痢。 衛生的環境の維持。投薬により治療は容易。
犬糸条虫
(フィラリア)
蚊が媒介となり感染。心臓に寄生。 簡単な血液検査。 典型的な心臓病の症状:咳、呼吸亢進、運動不耐性、体重減少、突然死など。 月1回の投薬で予防。

嘔吐
 犬が嘔吐するのは正常な行為である。口にしてしまった怪しげな物から身を守る唯一の手段が嘔吐なのだ。食べ過ぎたとき、食べ慣れない物を口にしたとき、犬は嘔吐する。食事の内容が少し変わったとき、あるいはゴミ袋から盗み食いしたときにも吐き戻すことがある。またとっておきの珍味の草食べた後で嘔吐することが多い。定期的に草を食べる犬も多いが、気分が悪いとき、嘔吐するために草を食べる犬も多い。

 嘔吐を数回繰り返した後の犬の胃を落ち着かせるには休ませることが一番で、24時間は食事を与えないようにする、吐き気が収まらないなら、少量の水を与える。水を一気に飲むとまた吐くこともあるので、まずは水を与え舐めさせるのもよい。食べ物を与え始めるときは、刺激の少ないものにする。たとえばご飯とゆでたチキンかひき肉を2対1の割合で混ぜた物などが望ましい。2~3日かけて徐々にいつもの食事に戻していく。

 嘔吐物に血が混じっていたり、餌を与えてないのに嘔吐が続いたり、元気がなかったりしたら、すぐに獣医を訪ねよう。嘔吐が長く続くようならば、毒物の摂取、膵臓の炎症、腸閉塞、肝不全、腎不全、パルボウイルスやジステンパーなどの感染症、鼓脹症も疑われる。

鼓脹症
 鼓脹症すなわち胃拡張、捻転症候群(GDV)は、緊急に治療を要す病気であり、一刻も早く獣医の治療を受けなければならない。鼓脹症になると胃はガスで膨張する。されに胃がねじれてガスがどちらの方向に流れなくなることもある。胃からはなにも出ない。犬は苦しみ、元気がなくなり、あえぐような荒い息をする。

 鼓脹症は早期に治療しないとショックを起こし、死に至ることも多い治療としては、胃内の圧力を減らしたり、胃を元の位置に戻して固定する手術を行ったりする。

下痢
 一生のあいだに一度も下痢をしない犬などいない。下痢は食事が原因であることが最も多く、食べ過ぎたり腸が受けつけない食事を食べたりすると下痢を起こす。ほかの原因としては、内部寄生虫やウイルス感染症(パルボウイルス)、食物アレルギー、消化不良、肝臓病、腎臓病、ガンなどがあげられる。単なる下痢なら、たいてい家庭で処置が可能である。

 対策としては、嘔吐の場合と同じように腸を休ませる。24時間は食事を与えないようにする、十分な量の水だけを与える。下痢が止まったら、ご飯とゆでたチキンかひき肉を2対1の割合で混ぜた物などが望ましい。2~3日かけて徐々にいつもの食事に戻していく。下痢が次の日も続いたり、血便が出たり、痛みがともなうような場合は獣医に相談する。

おなら
 おならはごく正常な消化の産物だが、家の中に不快な状況を引き起こすこともある。おならがひどい場合は、常識を働かせて対策をとればたいていの原因は改善できる。

 おならの原因はたいていは、食べ過ぎ、早食い、食事内容の急激な変化、生ゴミの拾い食いなどだが、これは簡単な方法で解決できる。すなわち、食事の量を減らす、食事の中身を変えるときは少しずつ変える、ゴミ箱に蓋をするなどの対策をとればいい。

 多数の市販のドッグフードに含まれている大豆が、おならの原因になるともいわれている。ドッグフードの表示を注意深く読み、おならがひどいようなら、大豆が主な成分となっている製品は避けよう。

肛門嚢の不調
 肛門嚢は、肛門の両脇、開口部のすぐ内側にひとつずつ存在する。肛門嚢には刺激性の悪臭を放つ内容物がつまっており、通常排便のたびに分泌される。

 肛門嚢はつまったり感染したりして、不満をきたすことがある。愛犬が後ろ脚のつけ根をカーペットに擦り付けたり、肛門の辺りを頻繁に舐めたりするときは、肛門嚢がつまっている疑いがある。肛門嚢炎を内部寄生虫と勘違いする人も多い。

 獣医に行けば、手で肛門嚢の開口部を広げて、つまっている内容物を出してくれる。肛門嚢が感染していれば、抗炎症剤をくれる。

尿の異常
排尿習慣の変化
 犬の排尿習慣に急激な変化があった場合は、すぐに獣医に診てもらったほうがいい。尿路感染症にかかると、排尿が困難になり、排尿回数が多くなったりする。オスでは前立腺の病気が排尿を困難にする事もあり、いずれの場合も血尿が出ることがある。膀胱にできた結石が尿道をふさぎ、排尿できなくなる犬もいる。そのまま放置すると、命にかかわる。

 老犬によく見られる糖尿病と腎不全(肝臓の機能低下によるもの)はともに、排尿が増え、のどの渇きが増すという症状になる。糖尿病はインシュリン注射により家庭で治療が可能だ。腎不全は老犬の代表的な死亡原因の一つだ。それでも低タンパク食にし、適量の水分を与え、こまめに獣医にチェックしてもらうことで、進行を遅らせ、老犬の寿命を延ばすことができる。

失禁
 犬は時には知らぬ間に排尿してしまう。卵巣を摘出したメスは睡眠中に尿を漏らすことがある。このような失禁は、獣医の処方する薬で容易に治せる。年をとると失禁が増える犬がいるが、散歩の回数を増やすことで改善される場合も多い。

老犬の健康管理
 きちんと世話をすれば、犬は15歳ぐらいまで生きることができるものであり、もっと長生きする犬も多い。残念ながら、年齢とともに様々な病気にかかりやすくなるのは確かで、腎不全、糖尿病、心臓病、難聴、関節炎、失禁、眼病(とくに白内障と進行性網膜萎縮)などがその例である。老化現象の一部として避けられない症状もあるが、気をつけて世話をし、年齢にともない敏感に対応してやれば、病気の影響を最小限に抑えられる。 下記参照

1.病気の最初の徴候を見逃さないようにし、気づいたらすぐに獣医に相談する。どんな病気でも治療は早い程良い

2.適度な運動をたっぷりさせる。毎日の散歩が、老化していく犬にもたらす空かは絶大だ。

3.愛犬が穏やかに愛情に包まれて暮らせる環境を作る。

4.毎日の運動と食事を規則正しく行う。

5.食事に気を配る。老犬は幼犬に比べて、カロリーやタンパク質の必要量は少ない。

薬の飲ませかた
 一般的な病気の多くは薬で容易に治せる。獣医から処方される薬は経口薬が多い。犬は強制的に何かを飲み込まされるのが嫌いなので、経口薬を与えるときには注意が必要だ。

 まず片手で上顎をしっかりつかんで口を開けさせる。このとき、犬に噛まれないようにすること。それから、もう一方の手で舌のできるだけ奥の方に薬を置く。薬を飲み込むまでそのままにする。なかなか飲み込めないときは、喉をなでてやると効果がある。犬に食欲がある場合は、薬をクリームチーズやピーナツバターの中に隠すとうまくいくことも多い。愛犬の苦痛が激しく、どうしても鼻づらをつかませない場合は、獣医へ連れていこう。わざわざ手を噛まれる危険をおかすことはない。